退職したら健康保険はどうしますか?
- まだそこまで考えてなかった
- 任意継続の健康保険(任継)と国民健康保険(国保)で迷ってます
- 保険料や給付内容などの違いが複雑で分からない
長年ずっと会社員でいると健康保険は空気のような存在で、退職で切り替えが必要なことは薄々気づいていても検討が後回しになってしまうようです。
しかし会社を辞めれば健康保険の切り替えは待ったなしです。
この記事では、考えられる6つの選択肢とともに、多くの人が迷う任意継続の健康保険(任継)と国民健康保険(国保)の違いを説明し、何がお得かを考えます。
この記事を読むことで
- 任意継続や国保のほかにも選択肢があることが分かる
- 任意継続と国保の比較のポイントが分かる
- 選ぶにあたって調べるべきことが分かる
退職後の健康保険について自信を持って選択できるようになります。
退職が近いなら、この記事をきっかけに健康保険についてそろそろ考え始めてみてください。
退職後の健康保険は何がお得?選択肢は6つ
上では任継と国保で迷うと書きましたが、定年退職後の健康保険は厳密に言うと6つの選択肢があります。
- 会社の健康保険を継続する
- 再就職先の健康保険に加入する
- 会社の任意継続の健康保険(任継)に加入する
- 会社の特例退職者医療制度(特例退職被保険者制度)に加入する
- 国民健康保険(国保)に加入する
- 家族の扶養に入る
なお「どの健康保険にも入らない」という選択肢を考える人がいるかもしれませんが、残念ながらそれはできません。
日本では国民健康保険法により全ての国民が何らかの公的医療保険に加入することが義務付けられていて、それによって国民皆保険制度を実現しています。
未加入については「10万円以下の過料(金銭罰)」の罰則規定まであります。
健康保険に加入していれば医療機関で保険証を提示することで支払いが3割負担で済みますが、保険未加入のままだと当然ですが全額負担となります。
手術などで高額な医療費がかかっても同じです。
健康保険に未加入でもメリットは何もありませんので、いずれかの健康保険に入るようにします。
会社の健康保険を継続する
定年退職しても再雇用の制度がある会社で再雇用されれば、それまでの健康保険を継続することになります。
これは選択の余地はありません。
保険料負担も会社と折半で今までと変更ありません。
再就職先の健康保険に加入する
定年退職後に他の会社に再就職したらその会社の健康保険に加入することになります。
これも選択の余地はありません。
その際も保険料負担は会社と折半になります。
会社の任意継続の健康保険(任継)に加入する
定年退職後に再雇用もされず他の会社に再就職もしない場合は、それまで入っていた会社の健康保険に2年間だけ任意継続で加入することができます。
任意継続でも給付内容は概ね変更ありませんが、保険料負担の労使折半はなくなり、全額が自己負担となります。
退職の翌日から20日以内に申請すれば任意継続被保険者になれます。
会社の特例退職者医療制度(特例退職被保険者制度)に加入する
会社員の健康保険は全国健康保険協会の「協会けんぽ」と企業が設立した健康保険組合の「組合健保」の2種類があります。
そして一部の健康保険組合では特例退職者医療制度(特例退職被保険者制度)を運営していて、退職前と同じ健康保険に75歳になるまで加入し続けることができます。
保険料は任意継続と同様に全額自己負担となりますが、退職前までとほぼ同じ給付やサービスを受けることができます。
ただしこの制度を運用している健康保険組合は非常に少ないです。(全国で約60組合)
さらに加入するには下のような要件がありますので実際に加入できる人は多くないです。
- 退職前の健康保険の被保険者期間が20年以上ある人、または40歳以降で10年以上ある人
- 老齢年金の受給資格がある人
もし自分の会社に特例退職者医療制度がある場合は候補の一つとして内容をよく確認しておくことをお薦めします。
国民健康保険(国保)に加入する
住んでいる市区町村で国民健康保険の被保険者になれます。
こちらも保険料は全額自己負担となりますが、そのまま75歳で後期高齢者医療制度に移行するまで国民健康保険の被保険者でいられます。
退職の翌日から14日内に市区町村に申請すれば被保険者になれます。
家族の扶養に入る
最後は配偶者や子供など家族の健康保険の扶養に入る方法です。
配偶者や子供などが働いていて勤め先の健康保険に入っている場合は、条件が合えばその扶養に入ることができます。
下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 健康保険の被保険者と同一生計
- 年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)
- 被保険者の年間収入の2分の1未満(同居の場合)
扶養に入れば保険料を支払う必要はありません。
任意継続と国民健康保険 比較のポイント
上に6つの選択肢を挙げましたが多くの人が迷うのは会社の任意継続の健康保険(任継)と国民健康保険(国保)ではないでしょうか?
とくに任意継続は退職時の切り替えのタイミングを逃すと加入できなくなりますので迷ってるなら事前によく調べておきます。
比較のポイントは下の3つです
- 保険料
- 給付内容
- 健康診断
保険料は国保が安くなることが多い
任意継続と国保では保険料の決め方がかなり違います。
退職後に収入が減ったり、子どもが独立して家族の人数が減る見込みの場合は、一般的に国保の方が保険料が安くなることが多いと言われています。
任意継続の保険料
協会けんぽは退職直前の自分の標準報酬月額に都道府県ごとの保険料率を乗じた額になります。
健康保険組合の場合は退職直前の自分の標準報酬月額、または全従業員の標準報酬月額の平均の低い方に保険料率を乗じた金額になることが多いです。
つまり任意継続の保険料は退職直前の給与明細で健康保険料を確認して、その2倍の金額と考えれば良いと思います。
ごくごく大雑把に言えば標準報酬月額の1割前後ではないでしょうか。
(2倍にするのは退職すると労使折半がなくなり全額負担となるため)
特徴は退職後に収入が増えても、あるいは減っても保険料は変わらないという点です。
収入が減る見込みなら保険料の支払いが負担に感じることになるかもしれません。
国保の保険料
国保の保険料は、自分や家族の前年度の収入額や資産、扶養者の数などによって、市区町村毎に定められている計算方法で保険料が算出されます。
市区町村のWebサイトには保険料の計算方法や試算例が掲載されていますので、自分や家族の収入を当てはめて試算してみます。
給付内容は任意継続が少し多いことも
国保は法律で定められているいわゆる法定給付のみとなります。
任意継続も医療費の3割負担や高額医療費の対応など、基本は国保と同じです。
組合健保などでは窓口負担をさらに軽減する仕組みや保養所の運営など、法定給付にプラスした付加給付を行っている場合もあります。
自分が加入している健康保険のホームページなどでよく確認しておきます。
健康診断は補助や提携先の医療機関による
健康診断と言っても人間ドック、生活習慣病予防健診など種類はありますが、会社員であれば毎年決まった時期に健康診断を受けるよう案内されます。
任意継続の場合は協会けんぽ、あるいはそれぞれの健康保険組合が提携している医療機関で生活習慣病予防健診を受診することになります。
国保の場合は人間ドック費用の一定額を補助している自治体が多く、各市区町村が提携している医療機関で受診することになります。
概ね市区町村内または周辺地域も含めた複数の医療機関で受診することになります。
健康診断の種類によって、また医療機関によって検査項目やオプション費用も異なります。
市区町村によって補助金額や対象(人間ドック、脳ドック)も異なります。
健康診断にこだわりがある場合は各ホームページで調べておきましょう。
退職したら健康保険は何がお得?:まとめ
ここまで説明してきましたが、健康保険の切り替え先はまとめると次のようになります。
いずれにしても国保や任意継続については給付内容や保険料を事前に可能な限り調べておきます。
とくに国保は任意継続と違って住んでる自治体によって保険料や助成内容/金額が異なりますので職場の同僚に確認することもできません。
自分で自治体のホームページで確認したり窓口に問い合わせて、後で後悔しないようにしましょう。
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